次代創造館HPへ戻る

« 時間を増やす魔法 | メイン | 輪廻転生 »

2010年09月08日

遅刻の治療法

乙は生来の遅刻魔だった。

甲は待ち合わせにいつも一流ホテルのラウンジ
を指定するようになったのは乙のおかげだった。

どれだけ待たせられても心置きなく本を読むこと
ができるからだった。

乙はファッション雑誌のモデルをしていたくらい
の美人だったのに、いつも遅刻が原因で呆れか
えられてフラれ続けの人生だった。

モデルをクビになったのも度重なる遅刻が原因
だった。

乙はどんなに遅刻しても甲に捨てられないのが
怖かった。

人生初めての経験だったからだ。

でも、本当は甲に怒って欲しかった。

そうでもしないと、甲はある日突然乙の前から
姿を消しそうだったからだ。

「この人は将来とてつもない大物になる」

乙にはそれがよくわかっていた。

「この人とは別れたくない」

とも思っていた。

乙が待ち合わせのラウンジにいつも通り小走り
にやってきた。

いつも通り甲が読書に熱中している大きな背中
が見えた。

「待った?」

と乙はわざと怒られるように軽く言った。

甲は読んでいた本をパタリと閉じて平然と言った。

「オレもちょうど今来たところだよ」

乙は自分の不甲斐なさに涙が溢れた。

テーブルの上には、氷の溶けきった薄茶色
のアイスコーヒーの表面のすっかり乾いた
グラスが置いてあった。

誰の目から見ても1時間以上待っていたの
は明らかだった。

最後までグラスを下げなかったのは、ホテル
側の粋なサービスだったのだ。

それ以来、乙は二度と遅刻しなくなった。


...次代創造館、千田琢哉

★2010年7月刊『転職1年目の仕事術』
★2010年4月刊『20代で伸びる人、沈む人』
★2009年9月刊『こんなコンサルタントが会社をダメにする!』
★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
★2009年8月刊『存続社長と潰す社長』
★2009年6月刊『継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88』
★2008年9月刊『社長!この直言が聴けますか?』
★2008年6月刊『THE・サバイバル 勝つ保険代理店は、ここが違う』
★2007年10月刊『あなたから保険に入りたいとお客様が殺到する保険代理店』

投稿者 senda : 2010年09月08日 00:00

コメント