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2010年07月14日

エレベーター

乙との出逢いは、エレベーターだった。

エレベーターの30秒は人生の縮図だ。

地上36階のインテリジェントビルであるセミナー
に参加した後、甲は帰り支度をするのに少し時間
がかかった。

講師に質問をしていたのだ。

40人はいたであろう部屋には結局甲と乙の2人
きりになってしまった。

甲はそのままエレベーターに向かって下りボタン
を押して待った。

遠くからハイヒールの音が近づいてきた。

リズムからコンパスの長さがよくわかった。

エレベーターが空いた。

甲は「開」ボタンを押して待っていた。

乙は、

「あっ、ありがとうございます」

と言ってエレベーターに駆け込んできた。

「いえ・・・」

と答えた甲は、乙の顔を見て驚いた。

セミナー中には気づかなかったが、後ずさりする
ほどの美人だった。

神様はどうしてこんなに不公平なんだろう、と思
えるくらい美しかった。

甲はちょっと、神様を軽蔑した。

それもそのはず、いつもテレビで見ているニュー
スキャスターではないか。

同時に、ちょっと垢抜けすぎていないピュアさが
また魅力を増していた。

メイクは洗練されているが、地方出身で欧米の
クォーターだな、というのがわかった。

乙は恥ずかしそうに言った。

「今日のセミナー、すごく熱心に聴いておられ
ましたね。」

実は、甲はサクラだった。

もちろん、

「ええ、サクラですから」

とは答えなかった。

「いいとこ見せようと思ってね」

と甲は適当に答えて、焦って途中のフロアのボタン
を押した。

ジレンマがあったものの、仕事は仕事だ。

「おやすみなさい」

と言って甲は何とか3階で降りることができた。

返事はなかったが、何とか切り抜けた。

かなりもったいないことをしたと思ったが、職務を
まっとうできた。

これがプロフェッショナルというものだ。

振り返った。

乙も一緒に降りていた。

「あの、ごめんなさい。間違えてしまって・・・」

この瞬間、甲は人生の運をすべて使い果たしたと
悟った。

明日、死刑になってもいいと思えた。

「人間、誰にだって間違いはあるよ」


...次代創造館、千田琢哉

★2010年7月刊『転職1年目の仕事術』
★2010年4月刊『20代で伸びる人、沈む人』
★2009年9月刊『こんなコンサルタントが会社をダメにする!』
★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
★2009年8月刊『存続社長と潰す社長』
★2009年6月刊『継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88』
★2008年9月刊『社長!この直言が聴けますか?』
★2008年6月刊『THE・サバイバル 勝つ保険代理店は、ここが違う』
★2007年10月刊『あなたから保険に入りたいとお客様が殺到する保険代理店』

投稿者 senda : 2010年07月14日 00:00

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