« 他人と過去は、変えられる。 | メイン | 幼馴染 »
2010年03月03日
スローモーションの殺人
「フー」
甲は深いため息をついた。
乙はクスクスと笑って甲に言った。
乙がクスクスと笑ったときはいつも要注意だった。
「珍しいわね、ため息なんてついて」
乙は大学院で生物学を専攻する学生だった。
「ねえ、ため息をつくと周囲の人たちは早死にする
って話、知ってる?」
甲は言った。
「悪いけど今日はそんな作り話を聴いている余裕
はないよ」
乙はキリリと襟を正して真剣な表情になった。
「これは本当の話だから真剣に聞いて。私にも関
わってくることなんだし」
福島県出身の乙はいつもはホンワカとしている癒
し系美人だったが、真剣なときはゆっくりと目を閉
じて大きく深呼吸した後にぱちりと大きな瞳をまっ
すぐにこちらに向けるのが癖だった。
「人間のため息をガラス管に集めマイナス118℃
の液体酸素で液化さるの。それをモルモットに注
射するんだけど、どのような反応が出たと思う?」
乙の質問に甲は興味本位で当てずっぽうに答えた。
「死んじゃった?」
「た?」を言い終えると同時に乙は答えた。
「そうよ。数分後にね」
「注射した直後から急に暴れ出してそのまま逝っ
ちゃったの」
甲は驚いた。
モルモットが死ぬことに驚いたのではない。
乙の迫力に驚いたのだ。
「だから、私の前でため息をつくのはやめて。2人
で一緒に長生きしたいから。ため息はタバコと一
緒でスローモーションの殺人よ」
...次代創造館、千田琢哉
★2009年9月刊『こんなコンサルタントが会社をダメにする!』
★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
★2009年8月刊『存続社長と潰す社長』
★2009年6月刊『継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88』
★2008年9月刊『社長!この直言が聴けますか?』
★2008年6月刊『THE・サバイバル 勝つ保険代理店は、ここが違う』
★2007年10月刊『あなたから保険に入りたいとお客様が殺到する保険代理店』
投稿者 senda : 2010年03月03日 00:00