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2009年10月14日
立場逆転
甲は待つのが好きだ。
乙と待ち合わせをする際には、かならず待ち合わせ場所
を書店にしている。
甲はたいてい30分以上前から書店で立ち読みをしている
から、遅刻をしたことがない。
対して乙はいつも5分遅刻の常習犯だ。
仕事では甲は時間に厳しいが、乙の遅刻には寛大だ。
乙が遅刻すればするほどたくさんの本を読むことができる
からだ。
一度、乙が1時間以上の大遅刻をしたことがある。
それでも甲は怒らなかった。
怒らなかったどころか、夢中で立ち読みしていた。
いつも遅刻してきた乙のほうが怒るのだ。
「ねぇ~、まだ読み終わらないの?」
立場が逆転してしまうのだ。
甲は名残惜しそうに読みかけの本を閉じてレジに向かう。
今まで甲と付き合ってきた女性たちが甲に愛想を尽かし
て去っていくのは、デートの最中でも書店の立ち読みが
多いことだ。
歩いている途中で甲が
「あ、ちょっと寄ってく」
と言ったらおしまいだ。
最低30分は書店から出られない。
お洒落なカフェで女性が一方的に話しかけても、甲は買っ
た本が気になって仕方がない。
女性としては面白いはずがない。
これでいつも甲は付き合って間もない女性にフラれ続けて
きた。
大阪の堂島にあるジュンク堂は、甲にとって出逢いの場
でもあり、別れの場でもあるのだ。
ジュンク堂は本当の本好きが集まってくる。
他の書店と決定的に違うのは、ジュンク堂は図書館の匂
いがするということだ。
本の買える図書館なのだ。
図書館は神聖な場所であり、恋に落ちやすい。
映画Love Letterに出てくるヒーローとヒロインの同姓同名
だった藤井樹たちも図書館で恋に落ちた。
でも同時に図書館の恋は終わりやすい。
甲はデートのコースに必ず本屋を選ぶが、やがて女性
たちは待ち合わせ時間に来なくなる。
なぜなら、6時間以上遅刻しても催促してくれないから。
甲はそのまま黙々と立ち読みし続けているのだ。
乙との別れもやっぱり同じ原因だった。
...次代創造館、千田琢哉
★2009年9月刊『こんなコンサルタントが会社をダメにする!』
★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
★2009年8月刊『存続社長と潰す社長』
★2009年6月刊『継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88』
★2008年9月刊『社長!この直言が聴けますか?』
★2008年6月刊『THE・サバイバル 勝つ保険代理店は、ここが違う』
★2007年10月刊『あなたから保険に入りたいとお客様が殺到する保険代理店』
投稿者 senda : 2009年10月14日 00:53